Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

本講座(第2期)は、2024年3月31日をもって終了いたしました。

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No.55 NATO諸国においてエネルギー転換が持つ国際政治上の意味
- リアリズム的政策としての再生可能エネルギー -

2024年3月
横井 晴紀
京都大学大学院経済学研究科 博士後期課程

ロシアによるウクライナ侵攻はエネルギー分野に大きな影響を巻き起こした。戦争・紛争とエネルギーとの関わりについては、エネルギー安全保障の文脈では盛んに議論されてきた一方、伝統的な安全保障分野である防衛政策とエネルギーとの関係についてはこれまであまり議論されてこなかった。エネルギーの貿易が国際関係に与える影響としては、他国に対する脆弱性が増すため脅威が増大するとの捉え方と、相互依存関係が成立することで国際関係が安定化するとの捉え方とがあり得る。本文では、防衛需要モデリングに基づいてNATO諸国の防衛費が化石燃料消費量の対ロシア依存度に影響を受けているのか検討した。その結果、ウクライナ侵攻以前においてNATO諸国はロシアからの化石燃料輸入が国家間の緊張を低減するという相互依存論的な捉え方をしていたことが示唆された。ウクライナ侵攻後においては、再生可能エネルギーの導入がロシアのパワーに対抗する手段として用いられている側面を指摘する。

キーワード:防衛費、安全保障、相互依存論、エネルギー転換、国際政治、再生可能エネルギー