Research Project on Renewable Energy Economics, Kyoto University

京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

本講座(第2期)は、2024年3月31日をもって終了いたしました。

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2020年9月28日(月)の部門C研究会 議事録

2020年09月28日(月)
於:Zoomオンライン会議

 2020年09月28日(月)16時〜20時、再生可能エネルギー経済学講座部門C研究会が、Zoomオンライン会議にて開催されました。今回は、京都大学の荒川忠一先生、気候ネットワークの平田仁子様、名城大学の李秀澈先生よりご報告いただきました。

洋上風力こそ、日本のブルーオーシャン

荒川 忠一 先生

 本講演は、洋上風力発電に言及し、日本での洋上風力発電事業を推進する必要性を説明することを目的とした。まずは洋上風力発電の国内外の現状を紹介した。2019年度末までに日本の風力発電の設備容量は世界のわずか0.6%に占めて(世界は651GW、日本は3.9GW)、欧州と比べても風力発電量は非常に少ないという状況が指摘された。そして、日本の洋上風力発電によるグリーンリカバリー政策を議論した。日本のエネルギー基本計画の電源構成の中で、風力が占める目標値(2030年までの目標は1.7%)が小さすぎて、来年度の計画にこれまでの保守的なエネルギー政策の数値目標を見直すことが重要だと強調した。また、「多くの候補区の選定」と「利害関係者との議論の促進」などの方法を通じて、促進区域の策定における地域との連携を強固することも重要だと指摘された。日本は世界で6番目に圧倒的な面積を持つ排他的な経済水域(EEZ)をうまく利用する必要があり、領海から排他的な経済水域に拡大することも提唱された。また、モノパイルを中心としての着底式洋上風車と様々な浮体式洋上風車が紹介された。最後に、日本は経済を考慮しつつ、地域との共発展を図りながら、「ブルー・オーシャン」戦略の発展を促進することが期待されて終わりとした。

pdf発表資料(7.26MB)

日本の石炭火力発電に向けた活動と政府政策に対する評価

平田 仁子 様

 本報告は、現在まで日本の石炭火力発電に向けた活動と政府政策に対して評価することが目的であった。まずは気候ネットワークの石炭火力発電に関する活動を例に挙げた。京都議定書第1期では、主に「6%削減提案」、「炭素税提案」、「排出量取引制度提案」などの提案により、石炭の優位性を下げて、石炭の利用実態を把握する活動を行なった。その後、「気候保護法案提案」、「MAKE the RULEキャンペーン」、「FIT・地球温暖化対策税・国内排出量取引制度」などの活動より、気候変動へのリーダーシップ、法制化を通じた政策シグナル、世論形成に工夫した。福島第一原発事故後からは、重点を原発ゼロ化、石炭新設阻止に移った。次に、国レベルの石炭火力政策に対して評価した。パリ協定での国際的な炭素排出削減傾向の影響を受けたものの、日本政府は「脱炭素社会」という長期戦略を設定したが、東日本大震災後も、石炭火力発電は依然として重要なベースロード電源の燃料とみなされている(エネルギー基本計画により、2030年にエネルギーミックスの26%、電気事業者の供給計画により、2029年に37%までに増加)。この状態が維持されれば、炭素排出量を削減し、脱炭素化を達成することは困難になり、パリ協定の目標と矛盾したことがわかった。最後に、2030年石炭ゼロの実現可能性について議論した。この目標を実現するためには、LNG火力を活用し、再生可能エネルギーの導入拡大が必要だと指摘された。

pdf発表資料(4.54MB)

石炭火力発電と原発の早期フェーズアウトの2050年まで日本経済と電源構成及び二酸化炭素排出影響分析
- E3MEマクロ計量経済学モデルを用いた分析 -

李 秀澈 先生

 本報告は、日本の石炭火力発電と原発が2030〜2040年までにフェーズアウトすれば、2050年までに経済と電源構成及び二酸化炭素排出量に与える影響について議論することを目的とした。まずは世界と日本の脱石炭火力発電と原発の状況を紹介し、研究で使っているE3MEモデルの概要と特徴及びメカニズムを説明した。次に、日本エネルギー経済研究所(IEEJ)の2019年版のエネルギー展望のレファレンスケースをベーズラインシナリオとして設定し、石炭火力2030年フェーズアウト、石炭火力2040年フェーズアウト、原発のフェーズアウトの3つの政策シナリオを設定することが示された。そして、E3MEモデルを用いて、石炭火力発電と原発早期フェーズアウトがGDP、投資、雇用、電源構成、二酸化炭素排出量に与える影響を推定して、それぞれの影響と理由を説明した。最後に、結論として、(1)2050年までの長期を想定する場合、石炭火力発電と原発の同時早期フェーズアウトいずれのシナリオでも経済に悪い影響は殆ど与えないこと(2)石炭火力発電と原発の早期フェーズアウトは、電源部門の二酸化酸素排出量を2050年に約40%削減するだけで、日本の2050年の温室効果ガス削減目標には大きく及ばないこと(3)電源部門の脱炭素化のためには、少なくとも2030年までには再エネへのFITなどの支援やカーボンプライシングが必要することが確認された。

pdf発表資料(5.3MB)