京都大学大学院経済学研究科東アジア経済研究センターが主催する「日中共同持続的発展人材育成短期研修プログラム」が一年余りの準備の末、5月16日に、第一回の研修が予定通り始まった。
地球温暖化に象徴される地球規模の環境問題が深刻になる中で、その対策が喫緊の課題となっている。一方、中国をはじめとする新興国は急速な経済成長を遂げる過程で、多くのエネルギーが消費され、地球温暖化問題を深刻化する多くの汚染物質が排出されるようになった。また、中国では、日本などの先進国が工業化過程 で経験した様々な公害問題も年追うごとに深刻化し、省エネ・汚染削減・循環型経済の建設が一刻も早く進めなければならない状況となった。こうした問題を解決し、中国と日本の持続的な発展を促すために、持続可能な発展(Sustainable Development)に資する人材の育成が必要不可欠である。本センターでは、研修プログラムを立ち上げ、中国国際青年交流中心と中国国家発展改革委員会研修センターと協力しながら、このような人材育成事業を推進することにした。このような研修は当面年2回、3年間実施する予定である。研修には、中国から派遣された中央や地方の中堅幹部の他、地球環境問題や持続可能な発展問題に関心のある日本企業や自治体からも中堅幹部が派遣され、両国の研修生が共に勉強し、一緒に議論することにしている。
第一回の研修は、本センターと中国国際青年交流中心との共催事業として、日本外務省・京都府・京都市の後援を受け、パナソニック・ダイキン工業・住友電工・イオンなどの日本企業から協賛・協力もいただき、6月5日までの3週間、京都大学をベースに実施されることになっている。
研修期間中、持続可能な発展に関する理念や日本の企業、自治体などの取り組みを最先端の研究者、実務者の講義から学ぶ一方、関連する企業や施設の見学と現地講義を通じて、実践的な経験や先進的な事例も学ぶ予定である。中国側(10名)と日本側(4名)の合計14名の方が研修生として参加されている。中国から の研修生は中国国際青年交流中心・湖南省・遼寧省・内モンゴル自治区・天津市の政府や共青団の中堅幹部から構成されており、将来の中国における持続可能な発展および中国国内における人材育成事業に大いに貢献することが期待されている。
第1回研修の開会式は5月16日午前9時半に始まり、森純一国際交流機構長、田中秀夫経済学研究科長が挨拶され、本研修の成功とこれをきっかけとする京都大学と中国との交流拡大に期待を寄せた。中国代表団団長・中国国際青年交流中心の曹長河副主任から感謝の意が述べられた。時計台前での記念写真撮影が終わった後、京都市地球温暖化対策室の藤原正行室長より「持続可能な低炭素社会の実現に向けた『環境モデル都市・京都』の挑戦」をテーマとする基調講演が行われた。午後に京都大学大学院経済学研究科の植田和弘教授より「東日本大震災と原発問題を考える」をテーマとする基調講演が行なわれた。いずれの基調講演に対しても 、研修生の皆さんから多くの質問が出され、予定時間を大幅に超えた活発な質疑応答が行われた。
夜の歓迎レセプションには、京都大学の淡路敏之副学長、田中秀夫経済学研究科長が出席され挨拶された。その中で、中国代表団一行が東日本大地震の影響があったにもかかわらず、予定通り来日したことに謝意を述べられ、3週間に及ぶ研修の成果に高い期待を寄せられた。続いて、中国代表団団長の曹長河氏が挨拶さ れ、まず、東日本大震災及び放射線漏れの被害者の方々にお見舞いの言葉を述べられた。それから、今回の研修に対して京都大学、経済学研究科、東アジア経済研究センター及び様々な形で協力してくれた関係者の皆さんのご尽力に感謝の意を示した。曹団長は長年日中青年交流を担当する日本通であり、ユーモアたっぷりなしゃべり口で会場に笑いの渦を巻き起こした。その後、曹団長より、今回最も多くの研修生を派遣してくれた湖南省の最高責任者である周強共産党書記から本研修プログラムに寄せられたメッセージが代読された。その中では、中国政府の持続可能な発展に対する決意が述べられると共に、京都大学でこのような事業が行われたことに 対して高く評価し、強い期待を寄せられた。乾杯の後、研修生の自己紹介および自由歓談が行われた。最後に、植田教授より閉会のご挨拶がなされ、レセプションが盛会裏に終了した。
第1週の研修は、省エネをテーマに4日間の講義と大阪ガスでの現地研修で構成され、予定通り終了したが、第2週では、汚染削減をテーマに日本の公害問題に関する講義と琵琶湖、関西電力、及び西淀川・公害と環境資料館(エコミューズ)での現地研修、第3週では、循環経済に関する講義と家電リサイクル工場、神戸市農業公園、京都市のごみ焼却施設と下水処理場の見学、及び研修生による最終発表と討論が予定されている。