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京都大学経済学研究科

再生可能エネルギー経済学講座

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第8回 再エネ講座公開研究会『日本版シュタットベルケの現在~エネルギー価格高騰下の地域新電力経営と地域インフラ運営における新たな官民協力の可能性~』

2023年5月29日(月)部門B研究会 議事録

 2023年5月29日(月)17:00~20:00において、第8回再エネ講座公開研究会(部門B研究会)がオンラインにて開催された。『日本版シュタットベルケの現在~エネルギー価格高騰下の地域新電力経営と地域インフラ運営における新たな官民協力の可能性~』をテーマに、第1部では、各地域の日本版シュタットベルケに関する事例発表が、第2部では日本版シュタットベルケに関する学術研究会が行われた。一般参加者も含め90名以上が参加し、活発な意見交換が行われた。

第1部

 第1部では先駆的な取り組みをしている地域新電力と自治体企業局ということで、うすきエネルギーの小川氏、東松島みらいとし機構の渥美氏、長野県企業局の青木氏にご報告いただいた。同報告では各団体の取り組みを中心にご紹介していただくとともに、新電力の経営を揺るがしたであろうウクライナ侵攻に端を発する電力市場価格高騰に対する影響など、幅広い側面からお話いただいた。

うすきエネルギー 小川氏

 うすきエネルギーは2016年10月の電力小売全面自由化に際して設立された会社である。第1部のはじめに、同社取締役の小川氏より事業紹介を軸に、うすきエネルギーと臼杵市・臼杵市のバイオマス杜市構想との関係性、電力市場価格高騰における経営の影響と、自治体との関係性、うすきエネルギーの今後の展望についてお話いただいた。同社は木質バイオマス都市構想の中では新電力事業として木質バイオマス発電所を通じて市内に電力を供給する役割を担っている。また電力市場価格高騰により一時債務超過に陥り株主構成も変化したが、単価の高い低圧への供給件数を増やしたり、コンサルティングなど事業拡大したりすることで黒字化へと回復させたという。同社は市と資本関係にないが、協定の締結や公共施設への電力供給などを通じて課題はありつつも連携をしているそうだ。最後に小川氏より今後の展望として、地域貢献型の電力メニューの開発や、環境・再エネ普及教育、調査受託事業、太陽光発電・バイオマス発電等分散型エネルギーの導入支援といったソフト・ハード両面で事業拡大を図っていきたいと締めくくられた。

東松島みらいとし機構 渥美氏

 続いて東松島みらいとし機構理事の渥美氏より、同社の取り組みについてお話いただいた。同社は東日本大震災により大規模な被害を受けた東松島市の復興計画と環境省が選定する「環境みらいとし」の構想実現を進めるために2012年に設立された一般社団法人で、市役所、商工会、社会福祉協議会の三団体から構成される社員総会を最高意思決定機関とし、その下に代表理事と渥美氏も含む理事2人、そして「くらし部会」、「産業部会」、「コミュニティ部会」、「エネルギー部会」の4つの部会から構成されている。同社英語名の頭文字をとった“HOPE”をスローガンに、産官学民の対話を促すプラットフォーマーとして、将来的な持続的発展を目指し、上記4つの部会が抱えるプロジェクトを多数行っているという。本報告では同講座の趣旨に合わせて4つ目の部会のプロジェクトとして「東松島市スマート防災エコタウン」のご紹介をいただいた。同プロジェクトは国内初の地産地消マイクログリッドで、石巻あゆみ野駅周辺の土地で太陽光発電と蓄電設備を中心に災害公営住宅、病院・診療所、公共施設を配備し、災害にも強い街づくりを行っているそうだ。また同社がローカルグッド創成支援機構や積水ハウス、アサヒビールなど様々な企業と提携を結びながらプロジェクトに取り組んでいることもお話いただいた。

長野県企業局 青木氏

 第1部の最後に長野県企業局の青木氏より同局が電気事業として行っている再生可能エネルギー地産地消と地域経済循環の取り組みをお話いただいた。同局の電気事業は戦後復興期からダム式水力発電の建設や中小水力開発とともに歴史を歩んできたが、一時は同局の他の事業と同時に民営化や事業譲渡を模索していた時期もあったという。しかし東日本大震災以降、再エネ拡大に向け、長野県のゼロカーボン戦略の実現と災害に強い街づくりの一翼を担っているそうだ。同局は既存の水力発電設備の改修に加え、新規に水力発電所の建設を行っており、名称の公募や地域観光・学習の場にもなるよう地域に根差した取り組みをしている。また中部電力との契約満了に伴い信州Green電気プロジェクトとしてプロポーザル方式のCO2フリー電気の卸売りに取り組み始め、全国の公営電気事業者の中では職員1人当たりの販売電力量は1位となっている。現状では官民問わず事業を担っていく県内のプレイヤーが育っていないなど課題は多々あるが、有識者の意見も交えながら、同局の強みである調整力を生かしながら、電力の県庁などへの自己託送などを検討し、県と同局が掲げるゼロカーボンと地域経済循環の理想の形に近づけたい、と青木氏は強調された。

第2部

 第2部では学術面で日本版シュタットベルケの検討をするために、京大側として静岡大学の太田先生、ローカルグッド創成支援機構の稲垣氏、広島修道大学の白石先生が発表した。

静岡大学 太田先生

 第2部の1人目として静岡大学の太田先生より「地方公営企業『日本版シュタットベルケ』になり得るか?」という問いと答えを、公営電気事業の取り組みの調査内容を踏まえお話いただいた。はじめに「日本版シュタットベルケ」と公営電気事業の定義について研究史を踏まえながら整理を行った。そして公営電気事業の現況として地方公営企業・電気事業は規模が小さいものの経営パフォーマンスが良いことを指摘された。また注目するポイントとして地方公営企業が地域貢献活動を挙げ、岩手、富山、長野、島根の四県で公営電気事業の地域貢献活動として一般会計への繰り出しや、地域における小水力発電の普及活動、県部局や電力会社との連携がなされてきたことを指摘し、岩手県の事例を中心に具体的な取組みに関する調査の結果をご紹介いただいた。こうした事例では地域新電力との連携を通じて地域経済循環の構築に向けてコミットしているが、現時点では議会の売電益利活用の関心の高さから公営電気事業の活動が阻害される傾向にあること、繰出金制度と地方交付税の関係性から地方公営企業が「日本版シュタットベルケ」の担い手となることの難しさを指摘された。他方で公営電気事業が地域新電力に売電を行うことを通じて、「日本版シュタットベルケ」への後押しを可能にし、場合によっては今後その担い手となり得ることを示唆された。

ローカルグット創成支援機構 稲垣氏

 2人目はローカルグッド創成支援機構の稲垣氏より46炭素先行地域の取り組みと傾向、そして選定自治体の特徴についてご報告いただいた。まず、脱炭素先行地域の概要に触れた後、アンケート調査の結果を基に選定された地域の特徴について述べられた。選定の過程では、第1回と第2回の選考において、太陽光発電が他の再エネに比べて圧倒し、多くの自治体では用途は異なるが蓄電池の利用が見られた。採用された都市自治体では、公共施設での太陽光発電が導入されており、農村型自治体ではソーラーシェアリングやバイオマス利用の提案が多く見られる。再エネポテンシャルの高い地域と電気の大量消費を抱える自治体の連携事例も見られ、また、地方金融機関との連携や大手電力会社の送電部門との協力が目立ったことを指摘した。次に選定された自治体の特徴として、以前は環境部署が担当していた温暖化対策が、現在では街づくりやエネルギー関連の部署に移行していることが挙げられた。目的としては、交付金の獲得や地域ブランディングが主な要素であることがわかった。また選定地域の多くは他の選定受賞歴があり、セカンドオピニオンを聞ける体制が整備されていることも重要である。一方で、応募のきっかけについては、ほとんどが首長からのトップダウンや自治体職員からの提案によるものであり、住民からの提案が乏しいという課題もある。最後に、稲垣氏は先行地域の調査から得られる示唆として、地域脱炭素は街づくりの一環であり、自治体内外のネットワークや地域の脱炭素に関わる担い手の形成が重要であること、職員や組織のノウハウ蓄積が重要である、とまとめた。

広島修道大学 白石先生

 最後に広島修道大学の白石先生より「日本版シュタットベルケ」の概念検討とそれが深刻化する人口減少と長期的な地域衰退への処方箋になり得る可能性について報告をいただいた。「日本版シュタットベルケ」はドイツのシュタットベルケに依拠しつつも、日本においては自治体新電力以外の事業体にもその役割を担いうることを示すことが目的である。はじめに参照元のドイツのシュタットベルケの概念検討として、①生存配慮(Derseinsvorsorge)に分類されるサービス供給を黒字事業・赤字事業問わず統合的に行うこと、②自治体直営または出資・所有を通じて法的に公共性を担保していること、③子会社間での損益通算を通じた横断連結納税によって税収が漏出することを防ぎ、雇用の創出または付加価値創造による税収増、配当により公設インフラ・公教育への再投資を可能にしていること、の3つを法的ではないもののドイツの慣習的な商標としてシュタットベルケの要件と定義した。そのうえで法的・制度的にドイツと同様の形態をとれないため、①統合的公益的サービス供給、②自治体関与による公共性担保、③自治体財政への貢献を「日本版シュタットベルケ」の3要件とし、地方公営企業と第三セクターにその可能性があることを提唱された。日本ではドイツと違い単一事業として経営されるのが主であり、複数事業の研究の実践と統合が少ないのが課題であるが、ケーブルテレビ事業が「日本版シュタットベルケ」の担い手になり得る可能性を見出した。米子の事例の紹介を踏まえ、今後詳細な検討が必要であると報告を締めくくった。

1.主催

京都大学再生可能エネルギー経済学講座

2.開催日時

5月29日(月)17:00~20:00 <オンライン>
事前予約が必要です。後記のURLからお申込みください。

3.プログラム

17:00-17:05 挨拶:諸富徹(京都大学)
17:05-17:20 講演:小川拓哉(うすきエネルギー)
       「うすきエネルギーの取り組みと今後の展望」
17:20-17:35 講演:渥美裕介(東松島みらいとし機構)
       「分散型エネルギー自立都市 宮城県東松島市の取組み」(仮)
17:35-17:50 講演:青木千明(長野県企業局)
       「長野県電気事業を活用した再生可能エネルギーの供給拡大と
        エネルギーの地消地産による地域内経済循環などへの取組」(仮)
17:50-18:05 質疑応答
18:05-18:15 講演:太田隆之(静岡大学)
       「「日本版シュタットベルケ」と公営電気事業」(仮)
18:15-18:25 講演:稲垣憲治(ローカルグッド創成支援機構)
       「46脱炭素先行地域の取組・体制の傾向と選定自治体の特徴
        ~ゼロカーボンシティ実現に向けた自治体の在り方検討~」
18:25-18:35 講演:白石智宙(広島修道大学)
       「「日本版シュタットベルケ」の概念と可能性の検討」
19:00-19:00 質疑応答
19:00-19:05 休憩
19:05-19:40 研究会メンバーからの質問および一般参加者からのQ&A
19:40-20:00 総合討論
※終了時刻は若干前後する場合がございます。

pdf報告資料1-1(小川)(2.82MB)

pdf報告資料1-2(渥美)(5.05MB)

pdf報告資料1-3(青木)(6.23MB)

pdf報告資料2-1(太田)(356.83KB)

pdf報告資料2-2(稲垣)(2.64MB)

pdf報告資料2-3(白石)(738.98KB)

4.参加定員

約300名様
※セミナーの録画および録音等はご遠慮いただいております。

5.参加費

無料
※事前のお申込みが必要です。

6.参加のお申込みについて

※ご参加をご希望される場合は、下部URLよりお申込みいただきますようお願い申し上げます。
▼参加申し込み
https://us02web.zoom.us/webinar/register/WN_5zfqIk-3TAqnNun8IUFWNg

7.セミナー使用システムについて

Zoomウェビナーを使用してのオンラインシンポジウムとなります。
主催者側からお送りするURLにアクセスいただくことでご参加いただけます。
※通信料はご参加者さまご負担となりますので、Wi-Fi環境下でのご参加をおすすめします。

8.その他・開催進行について

ご質問は、Zoomの「Q&A」を使って受け付けますので、「Q&A」に質問事項をご記入ください。可能な限り、回答させていただきます。

※報告資料について
開催当日の9:00以降に講座HPならびに以下リンク先に順次掲載させていただきます。
https://drive.google.com/drive/folders/1PM3_F_HylIEYq7_IeDUlYtMCa0LZmZEu?usp=share_link
なお、登壇者による資料は一部非公開とさせていただいているケースもございます。すべての報告資料が公開されるわけではない点、予めご了承ください。

※本研究会は録画され、公開研究会終了後に再エネ講座HPでの公開を予定しております。

ご不明な点につきましては下記までお問合せください。
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京都大学 大学院 経済学研究科
再生可能エネルギー経済学講座
〒606-8501 京都市左京区吉田本町
E-mail:ree.kyoto.u@gmail.com
電話:075-753-3474
Website:https://www.econ.kyoto-u.ac.jp/renewable_energy/stage2/top/
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